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2005-6 第9回
「正義の味方」

6月4日〜10日は『歯の衛生週間』。なぜ6/4に制定されたかは、6・4(ム・シ)歯と語呂合わせで決まったのだろう事は容易に想像されます。確かに昔はムシ歯が多かった。しかし、歯科医の努力、歯の健康に対する国民意識(予防)の向上の成果か、1980年代に入りムシ歯は減少傾向に転じ、現在に至ります。今では歯のみの健康ではなく、お口の中全体・歯周病〜全身疾患への繋がりまでが、多くの人々に知られるようになりました。今後もこの傾向は続くでしょうし『治療より予防』に重点をおいた医療が、歯科のみにとどまらず、発展・進歩をしていくと思います。
予防法について、今は情報があふれています。どれがどうこう等の話より、『アンパンマン』を例にとり概念的な話しをしたいと思います。
ある小冊子を読んでいましたら、アンパンマンの生みの親・やなせたかし氏のちょっとしたコメントが大変印象に残ったので、簡単に紹介します。

《アンパンマンは正義の味方であるが、他のヒーローモノとはちょっと違う優しさを持っている。敵であるバイキンマンをやっつけるが、それはこらしめる程度のところまで。破滅するところまではやっつけない。他のヒーローモノでは毎回敵を破壊、その結果次回はまた新たな敵が登場し戦う。しかしアンパンマンでは毎回バイキンマンと戦うが、それでうまく成り立っている》

これを読んで、あぁ、人のカラダの中もこれに似た現象がいつも起こっているな…と考えました。お口の中を含め、体内には細菌がいます。良い働きをするもの、そうでないもの、うまくバランスをとりつつ。わかりやすい例をあげましょう。昭和中期まで、人々の腸の中にはムシ(回虫)があたりまえの様に見られました。衛生面の改善により、今ではほとんど聞かなくなりました。しかし細菌の研究によると、これら腸の中のムシが分泌する成分にアレルギーを押さえる作用がある事がわかってきました。統計グラフでも、花粉症が増えだしたラインとお腹の中のムシが減少したラインが、うまく当てはまります。
つまり、人はより健康になろうと、不健康の元と思われる敵をカラダから排除しようと頑張っても、また新たな不健康を呼び込むきっかけを作っている。そう言えはしないでしょうか?薬もどんどん新しく作られています。それは逆に、それまでの薬が効かなくなった事をあらわしている…
話しをお口の中に戻します。お口の中にも無数に近い細菌がいます。地球上で生活するかぎり、うまく細菌と付き合っていかねばなりません。お腹の中やカラダの奥とは違い、お口の中は幸い人の手作業で菌を減らす事ができます。そう、ハミガキ等でプラークを取れば菌を減らせます。ムシ歯や歯周病だって少なくできるのです。歯ブラシ=アンパンチ、それで十分予防できます。実際そうしてきました。フッ素など加わればなおの事効果があります。
近年、ラクをして健康を得よう、との風潮があります。薬を飲むだけでダイエットとか…抗菌薬でお口の中の菌を減らす、その方法を私は否定はしません。が、将来その抗菌薬が効かなくなれば、バイキンマンより恐い敵があらわれ口に住み着くかも…と心配するのは私だけでしょうか…
予防のヒーロー、歯ブラシを見直しましょう。
さあ、今日もせっせとアンパンチ、々!   (笑)


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